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最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)5444号 決定 1954年11月25日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人村上信金の上告趣意第一点は、判例違反をいうが、所論引用の判例は本件に適切でなく、所論は理由がない。(所論引用の判例は、同意のあった書面として証拠能力があることを判示したのであって、被害届に署名又は押印がなければ、刑訴三二一条一項の書面として証拠能力を認めることができないとの判断までを含むものではない。そして、刑訴三二一条の「被告人以外の者の作成した供述書」には、署名も押印も必要としないと解するを相当とする。)同第二点は、判例違反をいうが、仮に第一審判決に所論の違法があったとしても、同判決挙示の証拠中所論調書を除いてもその余の証拠だけで、十分に同判決摘示の事実を認定し得るから、右の違法は原判決を破棄するに足る事由とはなし得ない。それ故、所論は採るを得ない。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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